留学エージェントは誰と契約するか
留学エージェントに申し込むとき、支払いが1本にまとまっていることがあります。
その1本の中に、性質の違う契約が混じっています。どこまでが日本の法律の届く範囲かは、混ざったままだと読めません。
あっせんは、政令の7業種に入っていない
特定商取引法が特定継続的役務として指定しているのは、法律が指定した7つの役務で、施行令の別表第四に並んでいます。どれも途中でやめる権利が付きます。エステティック、美容医療、語学の教授、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚を希望する者への異性の紹介。
「留学のあっせん」も「渡航の手配」も、この7つの中にありません。
三の項にあるのは語学の教授です。
三 語学の教授(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校、同法第百二十四条に規定する専修学校若しくは同法第百三十四条第一項に規定する各種学校の入学者を選抜するための学力試験に備えるため又は同法第一条に規定する学校(大学を除く。)における教育の補習のための学力の教授に該当するものを除く。)
そして41条1項1号が対象にしているのは、役務提供事業者が役務を提供する契約です。
役務提供事業者が、特定継続的役務をそれぞれの特定継続的役務ごとに政令で定める期間を超える期間にわたり提供することを約し、相手方がこれに応じて政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約(以下この章において「特定継続的役務提供契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供
授業をするのが現地の学校なら、その役務を提供しているのはエージェントではありません。エージェントが約束しているのは、手続きの代行と手配です。
だから2つに分けて読む
エージェントとの契約
- 中身は手続きの代行と手配
- 別表第四の7つに当たらないことが多い
- 当たらなければ概要書面も中途解約の上限も無い
学校との契約
- 中身は授業そのもの
- 日本の事業者が授業も提供するなら三の項に当たりうる
- 現地の学校と直接契約するなら、どの国の法律で判断されるかが別に決まる
役務を提供している相手が違うので、契約の相手も、使える条文も分かれる
同じ会社が両方をやっている場合があります。国内でレッスンをしつつ、海外の学校へのあっせんも売っている形です。その場合は、国内のレッスンの部分だけが三の項に当たることになります。
見積書で確かめること
申し込む前に、見積書か請求書で次を分けて聞きます。
- エージェントに払う額はいくらか。手数料・サポート費・登録料の名前で出てくる
- 学校に払う額はいくらか。授業料・入学金。エージェント経由でまとめて払う場合も、最終的な受取先は学校になる
- その学校との契約書は誰の名前で交わすか。自分の名前で学校と交わすのか、エージェントが間に入るのか
3つ目がいちばん大事で、やめたいときに解約を申し出る相手が変わります。見積書の読み方は留学の費用は誰に払うかで分けるにまとめました。
「一括でお預かりします」と言われたときは、預かった額のうち学校に渡す分がいくらかを書面で出してもらいます。書面に出ない場合、やめたときにどこまで返るかを事前に読む方法がありません。
国内で受けるレッスンがあるなら、そこに線を当てる
出発前に日本でレッスンを受けるコースが付いている場合、その部分は日本の事業者が語学の教授を提供していることになります。ここには三の項の線が当たります。
当たるかどうかは、英会話の解約は2か月と5万円で決まると同じく、期間が二月を超えるかと、金額が五万円を超えるかで決まります。
数え方で迷うのは、渡航費と授業料を含んだ総額で見るのか、国内レッスンの部分だけで見るのかというところです。41条1項1号は「相手方がこれに応じて」と書いていて、その役務の対価として払う額を指しています。だから見るのは、国内のレッスンに対して払う額のほうになります。
出発前の3週間だけ週1回のレッスンが付く、というよくある形だと、期間が二月に足りないので線を超えません。総額が100万円でも同じです。期間と金額は両方を満たす必要があるからです。
教材が付いてくると、扱いが変わることがある
三の項から五の項までの役務には、関連商品として一緒に解除できる商品が定められています。
別表第四の三の項から五の項までに掲げる特定継続的役務にあつては、次に掲げる商品
続けて挙がっているのがこれです。
電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法により音、影像又はプログラムを記録した物
CD・DVD・学習ソフトのことです。ファクシミリ装置とテレビ電話装置も並んでいます。
つまり教材が付いた語学の契約では、教材だけが残る形にならないように条文が用意されています。ただしこれは三の項に当たる契約の話なので、あっせんだけの契約に付いてきた教材は、この枠の外にいる可能性があります。
現地の学校と直接契約する場合、どの国の法律で判断されるかはセブ島留学はどの国の法律で決まるかに分けて書きました。分かれ目は契約した場所ではなく、勧誘をどこで受けたかです。
渡航先がワーキングホリデーなら、査証の申請そのものは自分で駐日公館に対して行います。外務省が連携・協力している民間団体は無いことも含めて、ワーキングホリデーの枠は国で違うに書きました。
会社の実在を確かめる先は、2つに分かれる
エージェントの公式サイトに「特定商取引法に基づく表記」が見当たらないことがあります。見当たらないことが、そのまま不備とは限りません。特定商取引法26条1項8号ハが、旅行業者の行う役務を通信販売の規定から外しているためです。
ハ旅行業法(昭和二十七年法律第二百三十九号)第六条の四第一項に規定する旅行業者及び同条第三項に規定する旅行業者代理業者が行う同法第二条第三項に規定する役務の提供
外れるのは「同法第二条第三項に規定する役務の提供」、つまり旅行業務です。旅行業法2条3項は旅行業務を、旅行業を営む者が取り扱う同条1項各号の行為と定めていて、その1項には運送や宿泊の手配のほかにこういう号があります。
八第一号及び第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、旅行者の案内、旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為
九旅行に関する相談に応ずる行為
だから同じ申し込みの中で、扱いが分かれます。航空券と滞在の手配は旅行業務で、通信販売の規定から外れます。語学学校の入学のあっせんは運送でも宿泊でもないので、その部分まで自動的に外れるとは読めません。
外れる側には、代わりに旅行業法の義務があります。3条が登録を求めています。
第三条旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない。
ただし、番号に出てくるのが観光庁長官とは限りません。旅行業法67条があります。
この法律に規定する観光庁長官の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
受けているのが旅行業法施行令5条1項です。
旅行業(本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)を実施しないものに限る。)及び旅行業者代理業(観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律(平成二十年法律第三十九号)第十二条第一項前段に規定する観光圏内限定旅行業者代理業を除く。以下この項において同じ。)に関する法第二章第一節(第十二条の三を除く。)、第五十四条第四項及び第六十一条第二項において準用する第十八条第二項、第六十二条第一項、第六十四条、第六十五条第一項及び第二項並びに第七十条第一項及び第三項に規定する観光庁長官の権限に属する事務は、これらの旅行業又は旅行業者代理業を営む者の主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事が行うこととする。
括弧の中が分かれ目です。「本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)を実施しないものに限る」なので、海外の募集型企画旅行を実施しない旅行業は、登録の事務が都道府県知事に移ります。
だから「◯◯県知事登録旅行業 第2-」「第3-」で始まる番号も、3条の登録です。観光庁長官の番号だけを探すと、登録している事業者を「無い」と読んでしまいます。番号が都道府県知事のものなら、その事業者は海外の募集型企画旅行を実施しません。そこまで番号から読めます。
そして旅行業法12条の4第1項が、契約する前の説明を求めています。
旅行業者等は、旅行者と企画旅行契約、手配旅行契約その他旅行業務に関し契約を締結しようとするときは、旅行者が依頼しようとする旅行業務の内容を確認した上、国土交通省令・内閣府令で定めるところにより、その取引の条件について旅行者に説明しなければならない。
同条2項が説明のときの書面を、12条の5第1項が契約したあとの書面を求めています。
置かれている位置は、期間と金額の線を超えた契約に付くものと似ています。特定継続的役務提供では、申し込む前に渡される概要書面と、契約したときに渡される契約書面が、それぞれ同じところに置かれています。
つまり確かめる先が2つに分かれます。特定商取引法に基づく表記があるならそれを読み、無いなら観光庁長官登録旅行業の登録番号があるかを見ます。番号は登録の行政庁が持っているので、会社が自分で名乗るだけの肩書きとは別のものです。
どちらも見当たらない場合に、渡航後に連絡が取れなくなったときの手立てが弱くなります。私書箱やレンタルオフィスの住所だけで、電話番号が「請求があれば遅滞なく開示します」になっている場合も同じです。
名前が変わっていても、人は追える
登録番号も特定商取引法に基づく表記も見当たらない事業者を避けたとして、同じ人が別の会社を作っている場合は、社名だけを見ても分かりません。そこに当たるのが特定商取引法47条の2です。1項が、業務の停止を命じる場合に、その法人の役員や使用人にも同じ期間の禁止を命じられるとしています。
対象になる人の範囲が号で書き分けられています。1号がこうです。
一当該役務提供事業者又は当該販売業者が法人である場合その役員及び当該命令の日前一年以内においてその役員であつた者並びにその使用人及び当該命令の日前一年以内においてその使用人であつた者
「当該命令の日前一年以内においてその役員であつた者」まで入っています。命令が出る前に辞めていても、1年以内なら対象です。そして2項は、その人が別の法人で同じ業務を行っていると認められるときに、その業務の停止を命じられるとしています。
3項が読者にとっていちばん効きます。
主務大臣は、前二項の規定による命令をしたときは、その旨を公表しなければならない。
「公表しなければならない」なので、命令が出れば消費者庁のサイトで名前が出ます。会社名だけでなく、禁止を命じられた個人の名前も対象です。だから事業者を調べるときは、会社名と、代表者の名前の両方で引くことになります。
三の項に当たる契約なら、申し込む前に概要書面が渡されます。何が書かれているはずかは概要書面は申し込む前に渡されるにまとめました。前払いが5万円を超えるときは、前受金の保全措置の欄もそこにあります。
そもそもエージェントを通さない形もあります。大学間の取決めで行く場合は授業料を払う相手が在籍している大学のままになることがあり、あっせんの契約が発生しません。交換留学の単位には六十単位の上限があるに分けて書きました。
料金の内訳と解約の条件は語学スクールの中途解約と返金の上限にまとめました。契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。
番号と表記を、実際に見てみる
確かめられる先が分かれる、という話をそのまま当てられる例が手元にあります。
出ている番号や表記そこから読めること
- 観光庁長官登録旅行業の番号海外の募集型企画旅行を実施する施行令5条1項が都道府県知事に移す範囲の外にいる。ウィッシュインターナショナルの第1361号がこれ
- 都道府県知事登録旅行業の番号海外の募集型企画旅行は実施しない施行令5条1項で登録の事務が知事に移る範囲。ウインテック留学センターの東京都知事登録 第3-4361号がこれ
- 特定商取引法に基づく表記通信販売の規定から外れない役務があるU-GAKU は自社で学習プログラムと施設を運営していて、旅行業の登録ではなくこちらを出している
ウィッシュインターナショナルの会社概要には「観光庁長官登録旅行業 第1361号」が出ています。主な事業内容の先頭が「留学を主目的とした旅行商品の企画及び販売」なので、募集型の企画旅行を実施する側です。番号の出どころが、事業の中身と一致しています。
ウインテック留学センターは「東京都知事登録旅行業 第3-4361号」です。知事の番号なので、海外の募集型企画旅行は実施しない範囲になります。どちらも特定商取引法に基づく表記のページは見当たりませんでした。
U-GAKU は逆側です。特定商取引法に基づく表記があり、販売業者・代表責任者・所在地・電話番号が出ています。料金ページは、あっせんではなく自社で学習プログラムと施設を運営しているとしています。期間は1週間から20週間まで表になっています。4週間と8週間は二月に届かず、12週間と20週間は二月を超えます。同じ事業者の中で、三の項の線をまたぐ形です。
期間の数え方は短期留学は2か月を超えるかで変わるにあります。
どちらも、確かめられたのは公式サイトの表示までです。登録があることも、表記があることも、料金や中身を保証するものではありません。契約の相手とやめたときにいくら返るかは、申し込む前に渡される書面で確かめることになります。
ビザの申請を代行してもらう場合、外務省は連携している民間団体が無いことを明記しています。読み方はワーキングホリデーのビザ代行に任せきりにしないにまとめました。
旅行業の登録があるかどうかは、事業者が支払えなくなったときの扱いも分けます。登録がある事業者は営業保証金を供託していて、取引で生じた債権をそこから取れます。そこは留学エージェントから返金されないときにまとめました。
まとめ
- 留学のあっせんは、施行令 別表第四の7業種に入っていない
- 41条1項1号が対象にするのは、その役務を提供する事業者との契約
- 授業をするのが現地の学校なら、エージェントとの契約は別の契約になる
- 見積書で「エージェントに払う額」「学校に払う額」「学校との契約の名義」を分けて聞く
- 教材は三の項に当たる契約でだけ、関連商品として一緒に解除できる