留学エージェントから返金されないとき
申し込んで入金したあと、渡航が中止になったり、事業者と連絡が取れなくなったりすることがあります。相手に払う能力が無いと、契約の解除ができても金は戻りません。
旅行業法は、そこに備えて金を先に積ませる仕組みを置いています。使えるかどうかは、契約した相手がどの登録を持っているかで決まります。
事業を始める前に、供託する
旅行業法7条1項が営業保証金の供託を求めていて、同条3項が順序を決めています。
旅行業者は、前項の届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない。
供託の届出が先で、営業が後です。額は8条1項が決めます。前事業年度の取引額と業務の範囲に応じて国土交通省令で定めるので、扱う金額が大きい事業者ほど多く積みます。
積んだ金から、旅行者が弁済を受けられる
17条1項です。
旅行業者又は当該旅行業者を所属旅行業者とする旅行業者代理業者と旅行業務に関し取引をした旅行者は、その取引によつて生じた債権に関し、当該旅行業者が供託している営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する。
「その取引によつて生じた債権」なので、返金されるはずの金がここに入ります。相手の口座が空でも、供託所にある金は別に置かれています。
対象は「旅行業務に関し取引をした旅行者」です。事業者との取引が旅行業務にあたらないなら、この権利は出てきません。何が旅行業務にあたるかは契約の中身で決まります。契約したときに渡される契約書面と、見積書を残しておくことになります。
供託していない旅行業者がいる
ここが読み落としやすいところです。53条が供託の免除を定めています。
保証社員は、第四十八条第一項の観光庁長官の指定する弁済業務開始日以後、この法律の規定による営業保証金を供託することを要しない。
保証社員というのは、旅行業協会に加入して弁済業務保証金分担金を納めた事業者のことです。この事業者は営業保証金を積んでいません。代わりに協会がまとめて供託していて、48条1項がそこから弁済を受ける権利を旅行者に与えています。
だから供託所に問い合わせて「その事業者の営業保証金は無い」と言われても、それで終わりではありません。協会のほうを見ることになります。
契約した事業者弁済を受ける先
- 旅行業の登録があり、協会に入っていないその事業者が供託している営業保証金17条1項。額は8条1項により取引額と業務の範囲で決まる
- 旅行業の登録があり、協会の保証社員協会が供託している弁済業務保証金53条で営業保証金の供託は免除され、48条1項の権利が代わりに置かれている
- 旅行業の登録が無いこの仕組みは無い特定商取引法に基づく表記だけを出している事業者がこれにあたる
払戻しの条件は、事業者が単独で決めていない
供託とは別に、返金の条件そのものにも歯止めがあります。12条の2第1項は、旅行者と締結する旅行業務の取扱いに関する契約について、旅行業約款を定めて観光庁長官の認可を受けることを求めています。
認可の基準は同条2項にあります。その2号です。
二少なくとも旅行業務の取扱いの料金その他の旅行者との取引に係る金銭の収受及び払戻しに関する事項並びに旅行業者の責任に関する事項が明確に(企画旅行を実施する旅行業者にあつては、企画旅行契約と手配旅行契約その他の企画旅行契約以外の契約との別に応じ、明確に)定められているものであること。
払戻しに関する事項が、認可の基準そのものに入っています。括弧の中は、企画旅行を実施する事業者への上乗せです。企画旅行の契約と、それ以外の契約とで分けて明確にすることを求めています。同じ事業者でも、募集型の企画旅行として売っているものと手配だけを引き受けているもので、条件が違いうることになります。
同条3項は、その約款を営業所で見やすいように掲示するか、閲覧できるように備え置くことを求めています。申し込む前に読める場所に置かれているので、キャンセル料の条件は契約したあとに聞くものではありません。
12条の3は、観光庁長官と消費者庁長官が公示した標準旅行業約款と同一のものを定めた場合に、1項の認可を受けたものとみなすとしています。同じ内容を使う事業者が多いのはこのためです。
取りに行くには手続きが要る
権利があることと、自動で振り込まれることは別です。48条2項です。
前項の権利を実行しようとする者は、その債権について旅行業協会の認証を受けなければならない。
協会に認証してもらう必要があります。営業保証金のほうは17条2項が「権利の実行に関し必要な事項は、法務省令・国土交通省令で定める」としていて、こちらも所定の手続きを踏むことになります。
そして期間があります。51条5項は、保証社員がその地位を失ったときの公告を協会に義務づけています。期間は六月を下らない範囲で定められ、その間に認証を受けるため申し出るべき旨が公告されます。同条6項は、期間内に申出のなかった債権について認証をすることができないとしています。
つまり公告を見落とすと、権利があっても取れなくなります。事業者が止まったと分かった時点で、協会の公告を探すところから始めることになります。
番号と加盟団体が出ている例を見る
このサイトが載せているウィッシュインターナショナルは、会社概要に「観光庁長官登録旅行業 第1361号」を出しています。登録があるので、この章の仕組みが働く側にいます。
同じページの加盟団体に、日本旅行業協会(JATA)正会員が並んでいます。ただし協会の会員であることと、保証社員であることは同じではありません。48条1項の保証社員は、49条により弁済業務保証金分担金を納付した社員を指します。実際にどちらの経路になるかは、供託所か協会に当たって確かめることになります。
会社概要に料金の記載は無く、行き先とプランごとに見積もりを取る形です。払う額と、その相手が誰かは、見積書で分けて見ることになります。
契約の相手を先に確かめておく
この仕組みが効くかどうかは、契約したあとでは変えられません。申し込む前に、相手がどの登録を持っているかを見ておくことになります。登録の種類の見分け方は留学エージェントは誰と契約するかにまとめました。
支払いを分けて、渡航が近づいてから残額を払う形にできる事業者もあります。総額と内訳の見方は留学の費用は何にいくらかかるかにあります。
事業者が営業を続けている場合の返金は、この条文ではなく契約の解除の話になります。日本の事業者との語学の教授の契約なら、請求できる額の上限が政令で決まっています。そこは語学スクールの中途解約と返金の上限にあります。
払い方によっては、この条文とは別の道もあります。クレジットで払っていれば、旅行業の登録の有無を問わずに支払いの請求へ対抗できます。そこは留学費用を分割払いにすると使える条文にまとめました。
契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。最寄りの消費生活センターにつながります。
まとめ
- 旅行業法7条3項により、供託の届出をした後でなければ事業を開始できない
- 17条1項は、取引によって生じた債権について営業保証金から弁済を受ける権利を旅行者に与えている
- 53条により、協会の保証社員は営業保証金を供託していない。代わりに協会が供託している
- 12条の2第2項2号により、払戻しに関する事項は約款の認可の基準に入っている
- 48条2項により、協会からの弁済には認証が要る
- 51条5項の公告には期間があり、6項によりその期間を過ぎると認証を受けられない