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概要書面は申し込む前に渡される

公開

語学スクールの説明を聞きに行くと、パンフレットと見積書が出てきます。

そのどちらでもない書面を、法律が渡すことにしています。名前は概要書面といって、契約する前に渡される、契約の中身をまとめた書面です。

契約する前と、契約したあとで、別の書面が出る

この義務がかかるのは、期間と金額の線を超えた契約、つまり特定継続的役務提供にあたるものです。特定商取引法42条1項が概要書面を定めています。

役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務の提供を受けようとする者又は特定継続的役務の提供を受ける権利を購入しようとする者と特定継続的役務提供契約又は特定権利販売契約(以下この章及び第五十八条の二十二において「特定継続的役務提供等契約」という。)を締結しようとするときは、当該特定継続的役務提供等契約を締結するまでに、主務省令で定めるところにより、当該特定継続的役務提供等契約の概要について記載した書面をその者に交付しなければならない。

「契約を締結するまでに」なので、申し込む前に渡されるはずのものです。同条2項が契約書面です。

役務提供事業者は、特定継続的役務提供契約を締結したときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、次の事項について当該特定継続的役務提供契約の内容を明らかにする書面を当該特定継続的役務の提供を受ける者に交付しなければならない。

こちらは契約したときに渡される書面で、8日を数え始める起点になります。

概要書面

  • 契約を締結するまでに渡される(42条1項)
  • 契約の概要を記載したもの
  • 読んでから申し込むかどうかを決めるための書面

契約書面

  • 契約を締結したときに遅滞なく渡される(42条2項)
  • 契約の内容を明らかにする書面
  • ここから8日を数え始める

渡される時点が違うので、読んで何ができるかが違う

概要書面と契約書面が分かれている理由(特商法42条1項・2項)

順番が逆になっていたら、42条1項に反しています。その場で契約書だけを出されて「あとで概要をお送りします」と言われた場合がこれです。

契約書面に何が書かれているはずか

42条2項は、書くべき事項を号で並べています。1号がこれです。

役務の内容であつて主務省令で定める事項及び当該役務の提供に際し当該役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品がある場合にはその商品名

買う必要のある商品があるなら、その商品名を書けという部分が入っています。教材を別に買わされる形は、ここで名前が出ていなければ書面として足りていません。

2号と3号は金銭です。

役務の対価その他の役務の提供を受ける者が支払わなければならない金銭の額

前号に掲げる金銭の支払の時期及び方法

「役務の対価その他の…支払わなければならない金銭の額」なので、授業料だけでなく、入学金も教材費も含めた額が書かれることになります。

さらに4号がクーリング・オフに関する事項、5号が中途解約に関する事項です。やめ方が書面に書かれることまで、条文が求めています。

何を見るか

書面を受け取ったら、次の順で読みます。

  1. 金額の欄に、払う金が全部入っているか。「別途」と書かれたものが本文のどこかで金額になっているか
  2. 買う必要のある商品の名前があるか。テキスト代・教材費が名前ではなく「教材一式」で済まされていないか
  3. やめ方の欄があるか。クーリング・オフと中途解約の両方について書かれているか
  4. 期間と総額が、線を超えているか。英会話の解約は2か月と5万円で決まるの2か月と5万円

4つ目で線を超えていないと分かった場合、その契約には書面の交付義務もやめる権利もありません。逆に言えば、書面が出てきた時点で、事業者はその契約を特定継続的役務提供として扱っています。

書面の見た目まで、省令が決めている

42条1項にも2項にも「主務省令で定めるところにより」が入っています。書く事項と書き方は、特定商取引に関する法律施行規則に落ちています。概要書面は92条、契約書面は94条です。そこには見た目の指定まで入っていて、94条は契約書面についてこう書いています。

契約書面には書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載しなければならない。

文字の大きさも決まっています。

契約書面には日本産業規格Z八三〇五に規定する八ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いなければならない。

だから受け取ったときに見るのは、書いてあるかどうかだけではありません。読むべき旨が赤枠の中に赤字で入っているか、本文が小さすぎないかも要件です。これが無い書面は、法律が求めた書面として足りていない疑いがあります。

5万円より多く前払いするなら、保全措置の欄がある

概要書面のほうの92条は、書くこととして前払いの扱いを挙げています。

特定継続的役務提供に係る前払取引(特定継続的役務提供に先立つてその相手方から五万円を超える金銭を受領する特定継続的役務提供に係る取引をいう。以下同じ。)を行うときは、当該前払取引に係る前受金について保全措置を講じているか否か及び、保全措置を講じている場合には、その内容

読むべきは「講じているか否か」の部分です。保全措置を取っていない場合も、取っていないと書かなければならない、という書き方になっています。

留学や長期のコースでは、受講が始まる前に何十万円かを先に払うことがあります。その額が5万円を超えるなら、概要書面のこの欄があるはずです。欄が無い、または空欄のまま渡された書面は、この規定を満たしていません。事業者が受け取った金をどう保全しているかは、渡航前に読めるところにあります。

前払いをするなら、事業者の財産の状況まで見せてもらえる

保全措置の欄よりもう一段踏み込んだ規定が、特定商取引法45条1項に置かれています。

役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供に係る前払取引(特定継続的役務提供に先立つてその相手方から政令で定める金額を超える金銭を受領する特定継続的役務提供に係る取引をいう。次項において同じ。)を行うときは、主務省令で定めるところにより、その業務及び財産の状況を記載した書類を、特定継続的役務提供等契約に関する業務を行う事務所に備え置かなければならない。

「政令で定める金額」は、特定商取引に関する法律施行令27条が決めています。

法第四十五条第一項の政令で定める金額は、五万円とする。

概要書面の保全措置の欄と同じ線です。前払いが5万円を超えるなら、事業者は業務及び財産の状況を記載した書類を、事務所に置いておく義務があります。

そして特定商取引法45条2項が、読者の側の権利を書いています。

特定継続的役務提供に係る前払取引の相手方は、前項に規定する書類の閲覧を求め、又は同項の役務提供事業者若しくは販売業者の定める費用を支払つてその謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。

閲覧を求めることと、費用を払って謄本や抄本の交付を求めることが並んでいます。求められるのは「前払取引の相手方」です。契約する前の段階でこれを求められるかは、条文の文言だけからは読み切れません。求めてみて断られた場合、その事業者はまだ相手方ではないと考えている、ということになります。

渡航して授業が始まるまでのあいだ、払った金は事業者の手元にあります。その事業者が続いているかどうかは、渡航前には確かめようがない、と思われがちです。この条文は、確かめる道を1本だけ用意しています。

事務所に置く義務なので、郵送やメールでの送付を求める形にはなっていません。遠方の事業者に対しては、謄本または抄本の交付を費用を払って求めることになります。断られた場合、その事実自体が45条に反している状態です。

説明を受けた内容と、書面の内容が違うとき

口頭の説明と書面が食い違っている場合、44条1項が効いてきます。契約の解除に関する事項について事実と違うことを告げる行為を禁じている条文です。

違反があった場合、48条1項と49条1項は8日の起算を止める形で書かれています。つまり説明が違っていたことで期間を過ぎたときは、期間が過ぎていない扱いになります。このときの起点は、事業者が改めて解除できる旨を書いた書面を渡した日です。

「その説明は書面と違いませんか」と聞くことに意味があるのは、この条文があるからです。

紙ではなくメールでPDFが送られてくる場合は、先に承諾が要ります。承諾の取り方と、いつ受け取ったことになるのかは契約書面をメールで受け取ると8日はいつからに分けて書きました。

書面が無いまま日が過ぎているとき

書面が渡されていないと、8日を数え始める起点がありません。だから申し込みから何か月たっていても、クーリング・オフの期間の中にいることになります。

「もう8日過ぎましたね」と言われたときに確かめるのは、日付ではなく書面のほうです。契約書面を受け取っているか、受け取っているなら語学スクールの中途解約と返金の上限の計算に進みます。

契約の相手がエージェントなのかスクールなのかで、そもそも書面の義務がかかるかどうかが変わります。そこは留学エージェントは誰と契約するかに分けて書きました。

もらった書面の中身に不安があるときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。最寄りの消費生活センターにつながります。書面を手元に置いてから電話すると話が早くなります。

契約の形は、資料を取り寄せる段階で聞ける

書面が来るかどうかは、見積もりが出てから決まります。申し込む前に確かめておくほうが早いところです。

このサイトが載せているウィッシュインターナショナルは、会社概要に「観光庁長官登録旅行業 第1361号」を出しています。主な事業内容の先頭は「留学を主目的とした旅行商品の企画及び販売」で、旅行業の側に立っている事業者です。

会社概要に料金の記載は無く、行き先とプランごとに見積もりを取る形です。額が決まっていないので、期間と金額の線を超えるかどうかも、その時点では決まりません。資料請求か無料留学相談のときに聞くのは、次の3つになります。

  1. 契約の相手は誰か。日本の事業者か、現地の学校か
  2. 授業料はどちらに払うのか。あっせんの手数料と分かれているか
  3. 概要書面と契約書面が渡されるか。渡されないならその理由

3つ目を聞いておくと、あとから「そういう契約ではなかった」と言われる余地が減ります。登録の見分け方は留学エージェントは誰と契約するかにまとめました。

まとめ

  • 概要書面は契約を締結するまでに、契約書面は締結したときに遅滞なく渡される
  • 契約書面には、買う必要のある商品の名前まで書くことが42条2項1号で求められている
  • 金額は「役務の対価その他の…金銭の額」なので、入学金と教材費も含む
  • やめ方(クーリング・オフと中途解約)が書面に書かれることまで条文が求めている
  • 書面が渡されていなければ、8日を数え始める起点がまだ来ていない

紹介した事務所の資格と料金

事務所運営会社契約の形解約の権利が付く線公式サイトで確認した内容
ウィッシュインターナショナルウィッシュインターナショナル株式会社あっせん(レッスンは現地の学校)サイトの表示からは判断できず
会社概要に料金の記載が無く、行き先とプランごとに見積もりを取る形です。資料請求か無料留学相談で確かめることになります。
会社概要に会社名「ウィッシュインターナショナル株式会社」、代表取締役社長、設立「1987年3月25日」、資本金「1億円」、登録「観光庁長官登録旅行業 第1361号」が並んでいます(2026-09-10 確認)。主な事業内容の先頭が「留学を主目的とした旅行商品の企画及び販売」なので、本邦外の募集型企画旅行を実施する側にいて、旅行業法施行令5条1項が都道府県知事に移す範囲には入りません。加盟団体として日本旅行業協会(JATA)正会員と海外留学協議会(JAOS)正会員、認証として留学サービス審査機構(J-CROSS)が並び、損害保険代理店として AIG損害保険株式会社の名前が出ています。特定商取引法に基づく表記のページは見当たりませんでした

料金は各社の公式サイトで、税込価格が文章で明示されているものだけを掲載しています。 「解約の権利が付く線」は、特定商取引法41条1項1号が施行令24条に委ねている 期間と金額のことです。語学の教授では2か月を超え、かつ5万円を超える契約だけが 特定継続的役務になり、クーリング・オフと中途解約の対象になります。 公式サイトの表示で判断できなかったものは「判断できず」と出しています。 見つからないことは、線を超えないことを意味しません。

出典