フィリピン留学は2か月と3か月で扱いが変わる
フィリピンの語学学校は、期間を週で選ぶ形で募集されていることがあります。4週、8週、12週、16週というふうに、申し込むときに長さを決めます。
その数字が、日本の法律の線を2本またぎます。片方は契約の側、もう片方は滞在の側で、線の場所も、またいだときに起きることも別です。
契約の側の線は二月
語学の教授の契約に解約の権利が付くのは、特定商取引法41条1項1号が定める線を超えたときだけです。期間の線は特定商取引に関する法律施行令の別表第四で、語学の教授は二月。金額の線は同じ施行令の24条2項です。
法第四十一条第一項第一号の政令で定める金額は、五万円とする。
期間と金額の線を超えた契約は特定継続的役務提供と呼ばれ、申し込む前に渡される概要書面の交付と、クーリング・オフと中途解約が付きます。線の数え方は英会話の解約は2か月と5万円で決まる、二月をどう数えるかは短期留学は2か月を超えるかで変わるにあります。
ただし、これが効くのは日本の事業者との契約についてです。授業をするのが現地の学校なら、そもそも役務を提供しているのは日本の事業者ではありません。そこは留学エージェントは誰と契約するかで分けました。
滞在の側の線は三月
こちらは特定商取引法ではなく旅券法です。16条が外国滞在の届出を定めています。
旅券の名義人で外国に住所又は居所を定めて三月以上滞在するものは、外務省令で定めるところにより、当該地域に係る領事官に届け出なければならない。
読むところを分けます。「外国に住所又は居所を定めて」なので、宿を転々とする旅行とは書き分けられています。「三月以上」が期間の線です。そして届け出る相手は日本国内の役所ではなく、その地域に係る領事官です。フィリピンのどこに滞在するかで、届け出る先も変わります。
外国に住所又は居所を定めて滞在する期間三月
三月に満たない
16条の届出の義務は生じない
三月以上
外務省令で定めるところにより、当該地域に係る領事官に届け出る
12週は、三月に足りない
ここで週と月の食い違いが出ます。12週は84日です。三月は暦の月を3つ数えるので、いちばん短い組み合わせでも89日になります。
つまり12週のコースは、どの月に始めても三月には届きません。 16週は112日なので、こちらは三月を超えます。「3か月くらいの留学」と考えていた期間が、条文の三月に当たるかどうかは、週で数えている限り自動では決まりません。
二月のほうも同じ形です。8週は56日で、二月はいちばん短い組み合わせでも59日です。8週のコースは二月を超えないので、金額がいくらでも特定継続的役務提供にはなりません。期間の数え方そのものは短期留学は2か月を超えるかで変わるで民法の規定から見ています。
申し込んだ期間またぐ線
- 8週(56日)どちらもまたがない二月にも三月にも届かない。契約の側の権利は付かず、滞在の届出も要らない
- 12週(84日)二月だけまたぐ金額が五万円を超えていれば契約の側の線を超える。三月には届かない
- 16週(112日)両方またぐ契約の側の線を超え、滞在の側でも16条の届出が要る
届け出なかったときに何が起きるか
旅券法23条は罰則を置いています。4項がいちばん軽いものです。
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。一一般旅券に記載された渡航先以外の地域に渡航した者二渡航書に帰国の経由地が指定されている場合において、経由地以外の地域に渡航した者
23条に並んでいるのは、旅券の不正な取得、他人名義の旅券の行使、返納命令に従わないこと、そして渡航先以外への渡航です。16条の届出は、この中に入っていません。
だから届け出なくても罰金にはなりません。それでも義務は義務として置かれていて、外れているのは罰則のほうだけです。届け出ておくと、その地域の領事官が滞在している人として把握している状態になります。
週で選ぶ形になっている例
このサイトが載せている U-GAKU は、料金ページで1週間・2週間・4週間・8週間・12週間・20週間から期間を選ぶ形になっています。拠点は沖縄 北谷、北海道 ニセコ、フィリピン セブ、マルタです。自社で学習プログラムと施設を運営しているとしていて、あっせんではなく自社が役務を提供する形になります。
日数に直すと、8週間は56日、12週間は84日、20週間は140日です。二月と三月の線は、8週間と12週間のあいだ、12週間と20週間のあいだにそれぞれ入ります。
料金は「¥89,900〜」のような下限の表示で、税込か税別かの記載が見当たりません。別途契約料 ¥30,000 がかかることは同じページに出ています。消費税・振込手数料・海外送金手数料・パスポート/ビザ申請料・航空券・海外旅行保険・現地滞在時に発生する費用は商品に含まれないと、特定商取引法に基づく表記が書いています。
三本目の線は、住所を日本に置いたままにするか
期間とは別に、日本の住民票をどうするかという判断があります。こちらは旅券法でも特定商取引法でもなく、住民基本台帳法と国民健康保険法の話になります。
住所を移すかどうかで、保険料を払い続けるかどうかも、現地でかかった医療費をあとから請求できるかどうかも変わります。そこは留学中の保険と住民票をどうするかにまとめました。
同じ三月の線は、ワーキングホリデーで行く場合にも同じように掛かります。枠と回数が国ごとに違うことはワーキングホリデーの枠は国で違うにまとめました。
16条の「住所又は居所を定めて」と、住民基本台帳法の住所は別のことを言っています。日本に住民票を残したまま外国に居所を定めることはあるので、片方の判断からもう片方を決めることはできません。
決める順に見る
- 期間を週で決める。何週かをはっきりさせる
- 日数に直して84日を超えるかを見る。超えるなら16条の届出が入ってくる
- 日本の事業者に払う額が五万円を超え、その契約の期間が二月を超えるかを見る
- 授業をするのが現地の学校なのか、日本の事業者なのかを見積書で分ける
3番目と4番目は順序が逆になりやすいところです。金額の大きさから先に見ると、その金額を誰に払っているのかが見えなくなります。
契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。最寄りの消費生活センターにつながります。
まとめ
- 契約の側の線は二月と五万円で、両方を超えたときだけ解約の権利が付く
- 滞在の側の線は三月で、旅券法16条が領事官への届出を定めている
- 12週は84日なので三月に届かず、16週は112日なので超える
- 8週は56日で二月に届かないため、金額がいくらでも特定継続的役務提供にならない
- 16条の届出には罰則が無い。23条の各号に入っていない